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末梢動脈疾患について

末梢動脈疾患について

《PADとは》

 PADは手足の血管の動脈硬化により、血管が狭窄または閉塞を起こして血液の流れが悪くなり、手先や足先へ栄養や酸素を十分に送り届けることができなくなる病気で、手足に様々な機能障害が現れます(図1参照)。

末梢動脈疾患について


《危険因子》
 加齢(65歳以上)、糖尿病、慢性腎臓病、脂質異常症、高血圧、喫煙者(喫煙量に比例する)に多く発症します。
*特に喫煙は倍、糖尿病は倍とそれぞれリスクが高くなります。

《主な症状》

末梢動脈疾患について

最初は、「手足が冷たい」「手足がしびれる」「手足の指の色が悪い」などの症状を訴えます。放置すると「歩くとふくらはぎに痛みが出る。休むと楽になる」といった歩行中の下肢の痛み(図2参照)が起こり、さらに重症化すると「じっとしていても手足が痛い」、「手足に治りにくい潰瘍が出来る」ようになり下肢の壊疽から切断に至ることもあります。
但し、典型的な間欠性跛行を訴える方はたった30%程度しかいません。

残りの70%の人が非典型的な症状であったり、症状がないので気づかないで症状が進行するのです!

《鑑別診断》
 
診断は病歴(症状とその期間)や下肢の色調・冷感などの自覚症状から比較的容易ですが、間歇性跛行(かんけつせいはこう)を示す別の疾患である脊柱管狭窄症(Lumbar Canal Stenosis; LCS)との鑑別診断が必要となります。

*脊柱管狭窄症について詳しくは脊椎・脊髄センターのページをご参照下さい。

《検査内容》 図3参照

上肢と下肢の収縮血圧の比(ankle brachial index: ABI)は簡単に測定できる指標で、スクリーニング検査として非常に信頼度も高く有用な検査です。通常は下肢の血圧は上肢の血圧より高いのですが動脈硬化が進むとこの比が逆転し1以下になります。0.9以下になると下肢閉塞性動脈硬化症が強く疑われ、重症例になると0.5未満まで低下することもあります。

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図3. ABI検査について
ABIによるとても簡単で非侵襲的であり、しかも安くて信頼性が高い検査です。
保険点数は60点(3割負担だと180円)で所要時間は約10分程度かかります。
ABIの値が0.9以下であると、末梢動脈疾患(PAD)の診断精度は
感度: 95%, 特異度: 100% とかなり精度の高い検査です。



*血圧脈波検査(ABI)の検査内容について詳しくは心臓血管センター 「検査のご案内」のページをご参照下さい。


 下肢動脈エコー検査も重要で閉塞部位の特定や重症度の判定にも役立ちます。また下肢動脈3D-CT検査や下肢動脈MR血管造影も有用です(図4参照)。最終的な診断として下肢動脈の血管撮影にて判断します。

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《治療》

 治療としては高血圧・糖尿病・脂質異常といった動脈硬化危険因子の是正です。
特に禁煙は徹底する必要があります。タバコに含まれているニコチンと喫煙による一酸化炭素は、 動脈硬化を引き起こしたり、動脈硬化を悪化させたりします。禁煙を必ず実行しましよう!
軽症では抗血小板剤やプロスタサイクリン製剤の内服、中等症以上ではプロスタグランジン製剤や抗トロンビン製剤の点滴が追加されます。重症の場合はカテーテルによる血管内治療(バルーンによる風船拡張治療やステント留置)または外科的血管バイパス術が選択されます(図5参照)。

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図5. 風船・ステント治療の様子
右図:下肢造影CTでは、25mm長の右総腸骨動脈閉塞を認めた。
左図:(治療前)下肢動脈造影では、右総腸骨動脈閉塞を確認した。末梢側へは側副血行路を介して血流があるのを確認した。左総腸骨動脈は動脈解離を伴う50%狭窄を認めた。
(治療後)カテーテル治療を行い、風船治療で閉塞・狭窄部位を広げた後でステントを留置し拡大に成功した。
下段:治療前後に施行したABI検査結果。治療前後でABIが著明に改善したことがわかる。


下肢動脈の狭窄・閉塞が高度で壊死(えし)を起こす場合(重症虚血肢)は下肢切断になることもあり、早期の発見・治療が必要な疾患です。

 下肢閉塞性動脈硬化症の方は下肢以外に心臓の冠動脈や頸動脈など全身の動脈硬化を合併していることが多く、症状の有無にかかわらず全身動脈硬化疾患の検索が必要になります。

《次に該当する方は積極的に検査を受けましょう!》

65歳以上の方

・50歳才以上で、糖尿病
喫煙歴
のある方

・動脈硬化因子(糖尿病、慢性腎臓病、脂質異常症、高血圧)を複数持っている方

・動脈硬化疾患(脳梗塞・狭心症・心筋梗塞など)を持っている方

・末梢動脈疾患(閉塞性動脈硬化症)の家族歴のある方
更新日:2013年03月05日
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